歯医者のぼやき&歯科情報

息子に歯が生えた!虫歯予防の最先端。

maro-haru227

はいどうも、まろです。
だいぶ期間が空きました。そうこうしているうちに…

息子に歯が生えた!

これは右下Aと呼ばれる歯です。下の左右Aはほぼ一番最初に生えてきます。
個人差はあるのですが、まぁ生まれて6ヶ月なので順当かなと思います。
歯が生える順番や時期に大体の決まりはあるのですが、生えてくる時期、
永久歯に交換する時期は結構お子さんによってばらつきがあります。

虫歯予防の観点で言えば、歯が生えてくるのは、遅ければ遅いほど良いです。
理由は後ほど詳しく述べます。

虫歯が減っている現代でも、お子さんの虫歯はゼロではありません。
逆に、9割近くのお子さんに虫歯がない今の時代に、3歳とかで虫歯あるというのは、
そのお子さんにとって、人生全体において非常にディスアドバンテージなのです。

今回の記事は、歯科医師として、今の小児の虫歯の実態とその予防について、
つらつらと書いていければなと思います。

今回はちょいと長いです。何個かの記事に分けようかとも思ったのですが、
このページを見たら虫歯予防のなんたるかが全てわかるようにと思い、
書き切りました。

お子さんの虫歯予防について

虫歯の子供はほとんどいない!?

まず、3歳児の虫歯になっている子供の割合と虫歯の本数を示したグラフがこれです。

どうでしょう。この20年で子供の虫歯は著しく減りました。
国民の衛生意識向上などが理由にあるとは思います。地域差もあるみたいです。
例えば沖縄だと虫歯だらけ、成人だと欠損(永久歯が抜けて無い)だらけみたいです。
まぁ世界的に見ても暖かい地域の人はいろいろルーズになる傾向ですからね笑

それは置いといて、虫歯は今や子供を10人集めて、1人いるかいないかなんです。
歯医者としては商売上ったりですね笑

…冗談はさておき

このデータから見てわかるのは、虫歯がないのが当たり前、スタンダードなんです。
はっきり申し上げると、虫歯がある子供を見ると我々はもう
下位10%の育ちの悪い子供」というイメージを持ってしまいます。
あらかわいそう、って思います。

怖いですよね、そんなふうに思われるの。でも事実です。
アメリカで、歯列矯正してない子は育ちが悪く思われるのに近いかも知れません。
そのうち歯列矯正の有無も育ちを測る指標になる可能性は十分ありますね。

乳歯の虫歯だからと甘く見ないで!乳歯に虫歯がある子の未来

大切なお子さんを生涯虫歯ゼロにするための道筋を章の最後にお示しします。

よく、「乳歯はそのうち抜けるからギリセーフ」みたいな思考の親がいます
残念ながらそれは大きな間違いです。

この章では淡々とデータだけお示しします。

① 3歳時に虫歯がない子は、積極的な虫歯予防をしなくても
  5歳時に虫歯ができる確率は5%だった。
② 3歳時に虫歯が1本でもある子の半数は5歳時に虫歯があり、さらに
  平均して5本虫歯になっている。
※1歳半でほとんどの子は乳歯が全て生え揃います

つまり、乳歯に虫歯があったらもうアウトなんです。乳歯に虫歯がある子は
永久歯が生えてくる6歳ごろには、サクッと永久歯にも虫歯を作ってしまいます。
ここで、虫歯を作る、という表現をしたのは意図的なものです。
現在の予防歯科界隈では、虫歯は細菌による感染症という考え方から、
高血圧、糖尿病と並ぶような生活習慣病として捉えられてきています。
虫歯はもう予防できる病気ですからね。

なぜ①で積極的予防をしなくても虫歯にほとんどならないのかというと、
虫歯にならない生活をしているから、です。いい生活習慣を確立しているからです。
②はその逆ですね、過去に虫歯がある人は未来でも虫歯を作ってしまいやすいんです。

そしてさらに小児の虫歯で大変なのが、子供は歯医者が怖いわけです。
まともに治療ができない子も少なくないです。
術者としても子供に怪我をさせるわけにはいかないので、暴れる子、
チェアの上でじっと出来ない子は、基本的に治療を先延ばしされます。

その間にも虫歯は進み、菌が繁殖し、他の歯も虫歯にしてしまいます。
そうこうしているうちに、永久歯が生えてこようものなら、永久歯も虫歯になります。
例えば、新鮮なイチゴの横にカビたイチゴを置くと、単独の時より早くかカビるのと
同じ原理です。腐った果実は周りの果実も腐らせます。

そして幼少期に永久歯を虫歯にしてしまうと、削って治療するわけですが、
削られた歯は削られたというだけで寿命が一段と短くなります。

なので、生涯虫歯ゼロの道筋としては
  歯が生えたら即、歯医者へ行く。(予防、矯正に力を入れているところが吉)
  定期的にメンテナンス、検診を受ける(子供を歯科医院に慣れさせるためにも)
  歯科医師からのアドバイスを聞く。(次々章で具体的に説明します)

となります。ポイントは歯が生えたら即歯医者!です。
最近では子供の医療費本人負担は保険なら0円や500円一律とかなので、
歯科医院へ連れて行くこと自体の負担さえクリアできれば、
経済的にはハードルは低いはずです。まぁ連れて行くのも親御さんは大変なんですけどね。そこは頑張ってほしいです笑

さらに、公的な検診だと3歳児検診、6歳児検診などがありますが、
そもそも3歳までに検診が一度もないのと、そのあとも3年後にしか検診がないので、
公的検診だけで安心してるとかなり虫歯リスクが高くなります。
かならず歯医者に行きましょう

そして、虫歯ゼロの達成度はこれが目安。

3歳までに虫歯ゼロなら、生涯虫歯ゼロ65%達成。
6歳臼歯と呼ばれる前から6番目の歯が生えた時に虫歯ゼロなら95%達成。
中学生くらいで7番目の歯が生えた時に虫歯がゼロなら生涯虫歯ゼロほぼ100%達成。


と言われております。6歳臼歯を死守できたら最高ですね。

あと、これは例外なのですが、まれに乳歯の下にあるはずの永久歯がない
(先天欠損)というケースもあります。レントゲン撮影をしないと発見できません。
4〜5歳でパノラマレントゲンを撮れる年齢になったら撮ってもらうといいでしょう。
(本人が撮影中10秒間ほどじっとできれば何歳でも撮影できます)

つまり、永久歯が無いない場合、その乳歯を一生大事にしないといけません。
そんな大切な乳歯が虫歯になるともう長くないです。
そもそも永久歯がないケースは、乳歯を大切にしても40〜50歳くらいで
ほとんどが自動的に抜け落ちます。

虫歯になりやすい子・なりにくい子。小児虫歯は保護者が悪い。

虫歯になりやすい生活環境

①子供の手の届くところに食料がある。
②食事摂取に規則的なリズムを設けていない。(間食が多い)

③兄・姉など上に兄弟がいる。
④アレルギー、鼻詰まりなどで口呼吸である。
⑤歯が生えるのが早い。

①②が最悪です。虫歯の発生の一番の原因は飲食回数が多いことにあります。
乳幼児は胃が小さいため一度の食事で必要なエネルギーを取れないので
補食としておやつの時間は必要になるのですが、ここでポイントなのが、
おやつの時間に与えるものは菓子である必要はないのです。
小さいおむすびでもいいですし、昨晩の残りなどでもいいのです。普通の食事を
与えるイメージ
でいてください。子供用のお菓子とか売ってますけど、毒です。
やめてください。砂糖中毒については後日記事を書きます。
そして、不必要に飲食回数を増やさないでください。

食事を摂ると(糖入りジュース含む、牛乳は含まない)、口が酸性になります。
その時間が長いと歯が溶かされて虫歯になります。

これは親が管理しなければなりません。ジュースは本当に最悪です。
3歳以下にジュースやチョコなどの砂糖の塊みたいなものを与えると
イライラしやすい子、キレやすい子になります。大人でも体に悪いものですので、
10キロとか15キロとかの体重の子供が一気に血糖値が上がるような食事をしたら、
血糖値スパークで頭がぼーっとします。そして砂糖が切れるとイライラします。
これは砂糖中毒と呼ばれます。
そして砂糖を常習的に摂取して、歯と全身の健康を損ないます。

③はもうしょうがない事実です。上の子がいると菓子やジュースと出会うのが
上の子より早くなってしまいますし、子育てを2人以上してると1人目よりも雑になります。気を引き締めておきましょう。

④これはちょっと矯正の分野になるので、また別の記事で書きたいのですが、軽く説明します。口の中の抗菌作用を担っているのは唾液です。口が開いている、口呼吸になっている子は、口が乾燥します。つまりバリアである唾液が干からびているんですね。
そうなると雑菌が増えるので、大人でも口が臭いとか、虫歯、歯周病を悪化させたり
しやすくなります。さらに幼少期の口呼吸は発育、発達上でもかなり良くないです。
それを改善するには矯正のお話がいります。今回は長くなるので割愛。

⑤はメインではないのですが、小さい子は年齢が1歳違えば発達具合が全然違います。
そして歯は口の中に顔を出して初めて虫歯になる可能性を持ちます。つまり

5歳で6歳臼歯が生えてしまうと、まだ手が不器用なのでうまく歯磨きできません。
7歳で6歳臼歯が生えると5歳よりは歯磨きがマシなので、虫歯になりにくいです。

こういう点から、特に永久歯は遅く生える方が虫歯予防には有利なのです。

親に虫歯があれば子にもある

これはまんまですね。さらに兄弟に虫歯がある子は、下の子は絶対と言っていいほど
虫歯になります。

虫歯だらけは児童相談所への通報案件

たまに、えらいこっちゃ!みたいなお子さんがいます。
半分以上虫歯で口の中が真っ黒とか。そして次回予約を取らないで、
全ての治療が終わってないのに痛い歯だけ応急処置したら二度と来ない、とかは特に
虐待やネグレクトを疑うため、児童相談所に通報することがあります。
どれだけ機能しているかは分からないですが、
自治体の職員がお家訪問をする場合があります。

以下ショッキングは虫歯画像です。閲覧注意。

こんな子は年に1〜2人しか来ません。で、大概一度の来院だけで来なくなります。
もちろん通報します。こうなったら、黒くなってる歯はほぼ抜歯になりますが、
歯並び的には嘘でもいいから乳歯を残したいという思惑はあります。
とりあえず当院では親に厳重注意をし、カウンセリングをお勧めします。

意外と簡単!虫歯の予防法。フッ素ジェル!

まぁ、簡単と言いましても、親は家事、仕事と並行して子育てしないといけないので、
大変なのは大変です。その中でも、簡単にできるものから順に紹介します。

最も手軽で最強!フッ素の使用

目次の通りです。使い方を説明します。
3歳以下の子供は、ぶくぶくうがいがまだ出来ないですので、
フッ素入りのジェルを、仕上げ磨き後に歯に塗りましょう。
市販の歯磨き粉にも入ってますが、ぶくぶくがまだできないのでうがいができません。
なので、1歳とかの本当に小さい子はガーゼで歯を拭いて、仕上げにフッ素ジェルを
少量塗ってあげてください。丁寧に塗らなくても大丈夫。歯にペッと付ければOK。

口の中にフッ素の濃度がいくらかあることが大切です。

食事制限や完璧な仕上げ磨きより簡易的で効果的です。誰でもどんな子でも
口の中に一瞬でもフッ素ジェルが入れられればいいので、絶対やってください。
ジェル以外の発泡するタイプの歯磨き粉は、うがいが出来ない子や、
シュワシュワするのが嫌な子もいるので、まずはジェルからでいいです。

液体フッ素製品は、ぶくぶくうがいが出来ないといけないのですが、
ぶくぶく自体は模倣学習と言って、親を真似て練習しないと覚えないです。
まずは頬を空気で膨らませたりする練習からすると良いですが、
ぶっちゃけフッ素ジェルとフッ素入り歯磨き粉だけでこと足りるので、
うがい薬はあまり必要じゃ無い気がします。


こちらがよくある透明なジェルタイプのものです。
バナナだけ低濃度なので、要らないと思います。バナナ以外の3種でOKでしょう。
我が子にも買ってやりました。

そして、食事の摂取回数を決める。ジュースは禁止。

前の章でも書きましたが、不規則に食事を与えないことです。
小さい子だと5〜6回の食事が必要ですが、だんだん体が大きくなって、1回の食事量が
増えれば、4回とか、3回とかに減らしてください。

そして、ジュースは食事と一緒でも基本ダメです。液体はすぐ小腸まで流れて
一瞬で吸収されて血糖値を上げます。虫歯以前に性格の形成や発育上、
非常によろしくないですので、やめましょう。親の責任です。

近頃では味のしない真水が飲めない子供が増えてきているそうです。
将来の生活習慣病と虫歯の多発を促進しているような事態だと捉えてください。

反フッ素に騙されないで

たまに、アンチフッ素教(笑)の人がいます。
騙されないでくださいね、もう世界的にフッ素が虫歯予防になることはわかってます。
フッ素の摂りすぎは確かに体に悪いですが、何事も摂りすぎは体に悪いです。

ちなみに、フッ素で中毒症状を起こすには、小学生くらいの子が
お徳用の大きいチューブの歯磨き粉を2本丸呑みにしたら中毒になるそうです。
そんなこと誰もしないですよね?普通に使えば数ヶ月はなくならないはずです。

醤油だって何リットルか忘れましたけどたくさん飲めば命の危険がありますよね。

こんな悪徳なビジネスをする歯科医師がXにいました。
フッ素嫌いな患者をターゲットに「当院は反フッ素です」と謳って集患してるくせに、
自分の子供にはしっかりフッ素で虫歯予防をしているという人がいました。
ひどいもんです。

人は自分の信じたいものを信じようとしますが、カモられないようにしてください。

うちの院長は、昔(今もだが)健康オタクで、
自分の娘にフッ素を使わないで育てたそうです。そして今高校生ですが、
虫歯だらけで後悔しているそうです。

変な陰謀論にハマらないようにしてくださいね。

おわりに

とっても長い記事になったのですが、いかがでしたか。
口腔疾患である虫歯、歯周病を予防することは、全身疾患の予防と健康増進に
非常に重要であることが近頃のあらゆる研究でわかっています。

歯周病は糖尿病やアルツハイマー型認知症、脳血管障害のリスクを
上げることまでわかっております。

大人ももちろんなのですが、子供の体は、食べたもので出来ていきます。
発展途上である子供の体は、大人よりも食事の内容、取り方に影響を受けます。
今回は虫歯予防にフォーカスしましたが、食べるもの、食べ方、食べる姿勢などで、
歯並びを含めた顎顔面領域の発育にまで影響を及ぼします。

そう言った話を今後記事にできたらなと思います。
今回の話がお役に立てれば嬉しいです。

では次の記事でまたお会いしましょう。

ABOUT ME
まろ
まろ
歯科医師/一児の父
2024年10月、第一子誕生!男の子!歯科医師であり父親、30代。
普通の虫歯治療全般と矯正治療をしており、日々勉強中。
釣り・ギター・ゲーム・キャンプが趣味。実は台湾生まれ日本育ち、母は台湾人。
子供の頃は小学校で水泳、サッカー、中学で柔道、高校でバンドマン。
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